莫大な広告費をつぎ込めば相手をつぶせると言ってはばからない。

アリババは2014年、ニューヨーク株式市場に鳴り物入りで上場を果たしたが、その後は株価がピークの半値以下に下がった。
中国経済の減速懸念と比例して値下がりする様子は、中国事業に依存するアリババの内弁慶ぶりに対する投資家の落胆を表す。
アリババは内弁慶の解消を狙い積極的な企業買収を展開してきた。
14 年に投じた資金はモバイルやネット分野だけで60億ドル。
それでも海外比率が一向に高まらない背景には、豊富な資金力を持つ同社ですら乗り越えられないネットビジネスの特殊な壁がある。
一昔前ならネットビジネスの参入障壁は、工場などの投資がかさむ製造業より低いというのが常識だった。
しかし台湾の鴻海精密工業によるシャープ買収が示すように、OEMの発達やデジタル化で製造業の参入障壁は着実に下がっている。
一方のネット分野。
アリババは、消費者が依存するような圧倒的に強いプラットフォームを築いてしまえば、他社の新規参入はほとんど怖くないということを身をもって体験している。
中国の実情を見てみよう。上海市で働く30代の女性はアリババ依存症だ。
ネット 通販だけでなくコンビニでの支払いや飲食店の予約、タクシーの配車まで、アリババのアプリが入ったスマホで済ませる。
米アップルは2月、電子決済アップルペイを中国に導入したが、この女性はアリババで十分なので使わないとそっけない。
世界のアップルですらそうなのだ。
ある幹部は新興企業が面白いサービスをひっさげて参入しても恐れることはない。
買収するか、それができないなら、同じサービスを開発してアリババのプラットフォームに載せ、莫大な広告費をつぎ込めば相手をつぶせると言ってはばからない。